倉庫を売却する手順とは?倉庫を売却するまでの流れや押さえておきたいポイントを解説
不要となった倉庫は、税金の支払いを抑えるためにも売却するのが賢明です。しかし、住居用の物件と違い、中古の倉庫の売却は簡単にはいきません。購入希望者も限られるため、不要となったら早期に売却の手続きを進めていきましょう。
本記事では不要な倉庫を売却するための手順や、倉庫を売却するときのポイントを解説します。
目次
倉庫を売却するまでの手順
倉庫のような不動産をスムーズに売却するためには、事前の準備を徹底し、手続きの流れを把握しておくことが大切です。ここでは倉庫を売却する手順を解説していきます。
1. 物件の査定
倉庫を売却するに当たり、最初に行うのが物件の査定です。物件の評価は素人には困難であるため、基本的には専門知識を有する業者に査定を依頼します。倉庫の査定を依頼する方法は主に以下の3つです。
- 不動産会社に依頼する
- 不動産鑑定士に依頼する
- 一括査定サイトに依頼する
不動産会社では、原則として物件の無料査定を実施しています。不動産会社の営業目的は、利用者と媒介契約を結び仲介報酬を得ることです。物件の無料査定も利用者を募るサービスの一環として行われています。
倉庫の正確な評価を知りたい場合は、国家資格を有する不動産鑑定のプロの不動産鑑定士に依頼しましょう。
ただし、査定をしてもらう際は、査定費用として土地・建物合わせて20万円〜30万円程度の費用がかかります。 (※)
一括査定サイトは、Webサイト上で複数の不動産会社にまとめて査定を依頼できるサービスです。複数の査定結果を参照できるため、相場も把握しやすくなります。
ただし、一括査定サイトの利用後は不動産会社からの営業活動も活発になるため、営業の電話や訪問が増える点に注意が必要です。
2. 必要書類の準備
2つ目に必要書類の準備を進めましょう。倉庫などの物件の売却には、 さまざまな書類が必要です。不動産会社との媒介契約や購入者との売買契約に必要な書類を事前に揃えておけば、後々手続きもスムーズに進められます。
なお、必要書類は契約する不動産会社によって異なるため、不動産会社の担当者によく確認しておくことが大切です。一般的に物件売却では以下の書類が必要とされます。
- 身分証明書
- 住民票
- 印鑑証明書・実印
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 登記識別情報
- 土地の測量図
- 建物の図面
- 固定資産税通知書
- 固定資産税評価証明書
- 売買契約書(不動産会社が作成)
- 重要事項証明書(不動産会社が作成)
3. 不動産会社との媒介契約
3つ目に不動産会社との媒介契約を締結します。媒介契約とは、自身が売却したい物件の買い手を不動産会社に探してもらうための契約です。なお、媒介契約には3つの種類があります。それぞれの違いを把握した上で媒介契約を締結しましょう。
1. 専任媒介契約
専任媒介契約は、1社の不動産会社とのみ媒介契約を締結する契約方法です。専任契約とすることで、不動産会社が積極的に営業の働きかけを行ってくれます。ただし、不動産会社の仲介とは別に契約者本人が買い手を見つけた場合は、そちらに売却も可能です。
なお、専任媒介契約を締結した場合、契約締結から7日以内に物件情報がレインズ(不動産流通機構が運営する不動産流通システム)に登録されます。(※)
レインズに登録された物件情報は、全国の不動産会社が参照可能です。また、専任媒介契約では、不動産会社が2週間に1回以上の頻度で契約者に状況報告する義務を負います。(※)
※出典:国土交通省. 「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会「レインズ機能の充実の必要性について」」P21.
https://www.mlit.go.jp/common/000221115.pdf, (入手日付2023-08-15).
2. 専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、専任媒介契約の内容をより強固にした契約方法です。専属専任媒介契約では、他の不動産会社と媒介契約を結べないだけでなく、契約者自身が買い手を見つけて取引する行為も禁止されます。物件の売却に関する全てを不動産会社に一任するため、契約する不動産会社選びが重要です。
なお、専属専任媒介契約では、不動産会社が契約から5日以内に物件情報をレインズに登録する義務と、7日間に1回以上の頻度で契約者に状況報告をする義務を負います。(※)
※出典:国土交通省. 「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会「レインズ機能の充実の必要性について」」P21.
https://www.mlit.go.jp/common/000221115.pdf, (入手日付2023-08-15).
3. 一般媒介契約
一般媒介契約は、仲介を依頼する不動産会社の数に制限がない契約方法です。一度に複数の不動産会社と媒介契約が締結できるため、広範な地域で物件を売り出せます。
ただし、一般媒介契約の場合、不動産会社にはレインズへの物件情報登録や契約者への状況報告の義務がありません。また、他社の利益を取られるリスクも高いことから、積極的な営業活動が行われない可能性もあります。
倉庫を売却する際は、専属媒介契約で1社の不動産会社に積極的な営業活動をしてもらうか、一般媒介契約で幅広く売り出すか、どちらがメリットになるかをしっかり検討しましょう。
4. 販売活動
4つ目に販売活動を行います。不動産会社との媒介契約が締結されると、売却したい倉庫の情報が不動産会社のWebサイトや広告に掲載されます。専任媒介契約や一般媒介契約であれば、売り手自身が知り合いに声をかけてみたり、自身のSNSで情報を発信したりと、自ら買い手を探すことも可能です。
また、購入に前向きな買い手が現れた場合は、倉庫の内覧を希望されることもあります。急な内覧希望にも対応できるよう、事前に掃除や整頓を済ませておきましょう。
5. 売買契約
5つ目に売買契約の締結です。倉庫の買い手が現れた場合、不動産会社から売り手に対して買付申込書が送付されます。買付申込書には買い手の希望が記載されているので、しっかりと内容を確認しましょう。希望購入価格などに問題がなければ実際の売買契約に進みます。
売買契約は売り手、買い手、不動産会社の3者が立ち会って執り行うことが一般的です。書類の漏れがないよう、事前準備を徹底しておきましょう。売買契約が締結されると、売り手は買い手から販売価格の5~10%程度の手付金を受領します。 (※)
6. 倉庫の引き渡し
最後に倉庫の引き渡しを行います。清掃や整理整頓、不要物の撤去を済ませて倉庫を新しい所有者に引き渡せる状態にしましょう。
なお、本来であれば物件の譲渡に当たり、所有権や抵当権の抹消などの行政手続きが必要です。しかし、不動産会社を介した譲渡であれば、これらの手続きは全て不動産会社側で済ませてくれます。
倉庫の売却を成功させるためのポイント
ここでは倉庫をスムーズに売却するためのポイントを紹介します。倉庫は購入希望者が限られるため、ポイントを押さえて売却に臨みましょう。
1. 相場価格を把握する
1つ目は、倉庫を適切な価格で売却するためにも、相場価格を把握しておくことが大切です。物件情報サイトなどを参考に、同地域で同条件の倉庫がいくらで売りに出されているかをチェックしておきましょう。相場を把握することで、査定額と照らし合わせて不動産会社を選びやすくなります。
2. 複数の不動産会社に査定を依頼する
2つ目は、複数の不動産会社に査定を依頼するのもポイントです。相場を把握するのと同様に、複数の査定を見比べることで適切な売却価格をイメージできるようになります。複数社に査定を依頼する手間を省きたい場合は、一度にまとめて査定依頼ができる一括査定サイトも活用しましょう。
3. 倉庫売却に強い不動産会社へ依頼する
3つ目は、倉庫売却に強い不動産会社に依頼することです。住宅用物件と異なり、中古の倉庫は購入希望者の数が限られます。倉庫をスムーズに売却するためには、不動産会社側のノウハウも必要です。不動産会社のWebサイトなどを参考に、倉庫売却に強い不動産会社かどうか見極めましょう。
4. 倉庫の解体も検討する
4つ目は、倉庫の解体を検討することです。倉庫の売却が難しいのは、建物の用途が限られてしまうためです。
倉庫の売却に時間がかかる場合、更地に戻すと土地の活用の幅が広がり、より多くの人に物件をアピールできるようになります。
しかし、建物を解体する場合は、当然ながら解体費用を別途用意しなければなりません。また、その土地が市街化調整地域に指定されている場合は、住宅用地としての売却はできない点にも注意する必要があります。
不要な倉庫は売却の手順を把握し、早めに売却の手続きを進めよう
中古の倉庫の売却は、物件の用途が限定されることもあり、なかなか買い手が見つからないケースも珍しくありません。倉庫売却を成功させるためには、適切な不動産会社を選び、売り手側も売却の手順を把握して準備を整えておくことが大切です。倉庫が不要になった際は、売却に時間がかかることを想定し、早期に売却手続きを進めるようにしましょう。
こちらの記事の監修者
torio real estate店長
宿南 秀文
- 平成18年度三井のリハウス(現在の三井不動産リアルティ株式会社)を経て、平成20年株式会社torioに入社。
- torio創業初期から数多く顧客様との商談・交渉・マーケティングリサーチを行ってきた経験を活かし、お客様の保有数不動産価値の創造に努めます。